インクルーシブ組織実践NAVI

「貢献の偏り」を防ぐ:多様な働き方・役割のメンバーの貢献を公平に見える化するリーダーの実践ステップ

Tags: 貢献の可視化, 公平な評価, 多様な働き方, チームマネジメント, リーダーシップ, インクルージョン

多様なチームにおける「貢献の見えにくさ」という課題

現在のビジネス環境では、メンバーの働き方や役割は多様化しています。リモートワーク、時短勤務、非定型業務、プロジェクト横断のサポートなど、一律ではない多様な貢献がチームの成果を支えています。しかし、従来のオフィスでの働き方や、特定の成果目標達成に基づいた評価慣習にとらわれていると、これらの多様な貢献が見えにくくなり、「貢献の偏り」が生じるリスクがあります。

貢献が見えにくい状態が続くと、見落とされたメンバーは正当な評価や承認を得られず、不公平感やモチベーション低下に繋がりかねません。また、リーダー自身もチーム全体の貢献を正確に把握できず、適切なリソース配分や育成計画が立てられなくなります。これはインクルーシブな組織運営において看過できない課題です。チーム全体の力を最大限に引き出し、公平性を保つためには、多様な働き方・役割を持つメンバーの貢献を意図的に「見える化」し、偏りをなくすアプローチが不可欠です。

なぜ貢献が見えにくくなるのか?

多様な働き方・役割における貢献が見えにくくなる背景には、いくつかの要因があります。

これらの要因が複合的に絡み合い、チーム内で貢献の認識に偏りが生まれる可能性があります。

貢献を公平に見える化する実践ステップ

リーダーがこの課題に取り組み、多様なメンバーの貢献を公平に見える化するためには、体系的なアプローチが有効です。ここでは、具体的な実践ステップをご紹介します。

ステップ1:チーム内の「貢献」の定義を広げる

まず、チーム内で「貢献とは何か」について共通認識を持ち、その定義を広げることから始めます。単なる成果物だけでなく、以下のような要素も貢献として明確に位置づけます。

これらの貢献要素をチームメンバーと共有し、「どのような行動がチームや組織にとって価値を生むのか」について対話することが重要です。

ステップ2:個々の役割と期待される貢献を明確にする

各メンバーの役割に応じて、どのような種類の貢献が期待されるのかを明確に言語化します。職務記述書や目標設定シートに、単なる業務内容だけでなく、期待される具体的な貢献の種類(例:「〇〇に関するナレッジをチームに共有する」「新しいツールの導入をサポートする」など)を盛り込むことが有効です。

特に多様な働き方をしているメンバーに対しては、その働き方の特性を踏まえ、どのような形でチームに貢献してもらうかを具体的に話し合います。これにより、メンバー自身も自身の貢献がどのように評価されるのかを理解しやすくなります。

ステップ3:定期的な対話を通じて貢献を把握する仕組みを作る

リーダーは、メンバーとの定期的な1on1ミーティングなどを通じて、日々の業務や貢献について具体的にヒアリングする機会を設けます。

これらの対話を通じて、リーダーはメンバーの貢献内容を具体的に把握し、記録しておきます。メンバー自身も、自身の貢献を言語化する機会を持つことで、自己認識が高まります。

ステップ4:貢献をチーム内で共有・承認する場やツールを活用する

把握した個々の貢献をチーム全体で見える化し、互いに承認し合う文化を醸成します。

重要なのは、形式的な報告だけでなく、具体的な行動やその行動がチームにもたらしたポジティブな影響に焦点を当てることです。

ステップ5:評価プロセスに「見える化」した情報を反映させる

ステップ1〜4で見える化した多様な貢献に関する情報を、人事評価や昇進・昇格の検討プロセスに反映させます。

これにより、特定の働き方や役割のメンバーが、その貢献に見合った正当な評価を受けられるようになります。

リーダーへのメッセージ:インクルーシブな「貢献文化」の醸成

多様なメンバーの貢献を公平に見える化する取り組みは、一度行えば完了するものではありません。これは、チーム内にインクルーシブな「貢献文化」を根付かせるための継続的な努力です。

リーダーが率先して多様な貢献に目を向け、積極的に声に出して承認することで、チームメンバーも互いの多様な貢献を認め合うようになります。この文化が醸成されれば、メンバーは安心して自身の持つ多様なスキルや視点をチームに活かすことができ、結果としてチーム全体のパフォーマンス向上やエンゲージメント強化に繋がります。

この実践ステップは、すぐに明日からでも試せるものばかりです。まずは小さな一歩から、チーム内の「貢献の偏り」をなくし、全てのメンバーの力が輝くインクルーシブなチームを目指していただければ幸いです。