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隠れた貢献を見逃さない:多様なメンバーの成果をインクルーシブに評価・承認するリーダーの技術

Tags: インクルーシブ, 承認, 評価, リーダーシップ, 多様なチーム

多様なチームを率いるリーダーにとって、メンバー一人ひとりの貢献や成果を適切に評価し、承認することは、チームのエンゲージメントやパフォーマンスを高める上で極めて重要です。しかし、多様なメンバーがいるチームでは、貢献の形も様々であり、従来の画一的な基準や無意識のバイアスによって、一部のメンバーの重要な貢献が見過ごされてしまう可能性があります。

このような「隠れた貢献」を見逃さず、多様なメンバーが公平に評価・承認されていると感じられる環境をどのように作るか。本記事では、インクルーシブな評価・承認を実践するためのリーダー向けの具体的なアプローチを紹介します。

なぜ多様なチームで「隠れた貢献」は見過ごされやすいのか

チームメンバーのバックグラウンド、経験、コミュニケーションスタイル、あるいは担っている役割が多様であるほど、彼らのチームへの貢献の仕方も多岐にわたります。例えば、以下のような貢献は、従来の「目に見える成果」や「声の大きいメンバーの発言」に比べて見過ごされがちです。

これらの貢献は、定量的な数値目標のように分かりやすく測定できない場合が多く、また、控えめなコミュニケーションスタイルを持つメンバーによってなされることもあります。さらに、リーダー自身やチームメンバーが持つ無意識のバイアス(例:ジェンダーバイアスにより特定の役割や貢献を特定のジェンダーに期待・結びつけてしまうなど)によって、特定のタイプの貢献や、特定の属性のメンバーによる貢献が見過ごされてしまう可能性も否定できません。

こうした「隠れた貢献」が見過ごされることは、貢献したメンバーのモチベーション低下を招くだけでなく、「正当に評価されない」という不公平感を生み出し、チーム全体の信頼関係やエンゲージメントを損なう原因となります。

インクルーシブな評価・承認を実践するための具体的なアプローチ

多様なメンバーの多様な貢献を適切に見出し、評価・承認するためには、リーダーが意識的に、そして具体的な方法で関与する必要があります。

1. 貢献の定義を広げ、チーム内で共有する

「貢献」とは何か、その定義を定量的な成果だけでなく、プロセス、チームワーク、サポート、ナレッジ共有など、多様な側面を含むものとしてチーム内で共有します。どのような貢献がチームにとって価値があるのかを言語化し、メンバー全員が「自分の多様な活動がチームに貢献しうる」と認識できるように促します。

2. 貢献の「観測機会」を意図的に増やす

リーダーは、メンバーの活動を多角的に把握するための「観測チャネル」を意識的に増やします。

3. 評価・承認の基準を明確にし、透明性を高める

どのような貢献が、どのように評価・承認されるのか、その基準を可能な限り明確にし、チームメンバーに共有します。抽象的な言葉ではなく、具体的な行動や状態として定義することで、メンバーは自身のどのような活動がチームに貢献しているのかを理解しやすくなります。評価プロセスにおける透明性を高めることも、公平感を醸成する上で重要です。

4. 承認の方法を多様化する

承認は、昇給や昇進といったフォーマルな評価だけでなく、日々のコミュニケーションの中でのポジティブなフィードバックや称賛も含まれます。メンバーの性格や好むコミュニケーションスタイルに合わせて、承認の方法を使い分けることが効果的です。

重要なのは、「承認」という行為自体が、メンバーの貢献が見過ごされていないことを伝え、彼らの行動を肯定的に強化する効果があるという点です。

5. 無意識バイアスへの気づきと修正

評価や承認のプロセスに自身の無意識バイアスが影響していないか、常に自問します。例えば、

こうしたバイアスに気づくためには、セルフチェックリストを作成したり、他の信頼できるメンバーや上司に意見を求めたりすることが有効です。評価の際は、具体的な行動事実に基づいて判断することを徹底し、直感や印象に頼りすぎないよう注意します。

まとめ

多様なチームにおけるインクルーシブな評価・承認は、単に公平性を保つだけでなく、多様な強みを持つメンバー一人ひとりが「自分はチームにとって価値ある存在だ」と感じ、最大限の力を発揮するための土台となります。リーダーが意識的に貢献の定義を広げ、観測機会を増やし、基準を明確にし、多様な承認方法を実践し、そして自身のバイアスに注意を払うこと。これらの積み重ねが、チームのエンゲージメントを高め、より強く、より生産的な組織文化を育むことに繋がります。明日からのチームマネジメントにおいて、ぜひこれらのアプローチを取り入れてみてください。