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多様なメンバーの隠れた強みを発見し、チームの力に変えるリーダーのアプローチ

Tags: 多様性, インクルージョン, リーダーシップ, チームマネジメント, 強み発見

チーム内の多様な「強み」を見つけ、組織の力に変えるには

現代のビジネス環境では、チームの多様性が増しています。年齢、性別、経歴、価値観、働き方など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが集まることで、新たな視点や発想が生まれ、変化への対応力が高まることが期待されています。しかし、多様なメンバーそれぞれの持つ「強み」を十分に引き出し、チーム全体の成果に繋げられているでしょうか。

リーダーの中には、従来の評価基準では測りにくいメンバーの潜在的な能力や、特定の経験に裏打ちされたユニークな視点を見過ごしてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。また、どのようにすれば多様なメンバーがそれぞれの力を最大限に発揮できる環境を作れるのか、試行錯誤されていることと思います。

この記事では、チーム内の多様なメンバーが持つ「隠れた強み」を発見し、それをチームの力に変えるための具体的なリーダーシップのアプローチについて解説します。

「強み」とは何か? 無意識バイアスを超えて発見する視点

まず、「強み」の定義を広げることが重要です。一般的にスキルや知識が強みと捉えられがちですが、それだけでなく、個人の経験、価値観、困難への向き合い方、周囲との関わり方、非公式な役割なども貴重な強みとなり得ます。例えば、 * 異業種での経験から培われた独自の課題解決アプローチ * 特定の趣味やボランティア活動で発揮される調整力や企画力 * 子育てや介護の経験から来る共感力や時間管理能力 * 物静かながら、細部への注意深さや粘り強い分析力

こうした「隠れた強み」は、従来の画一的な評価基準や、リーダー自身の無意識バイアスによって見過ごされやすい傾向にあります。例えば、声が大きいメンバーや積極的に発言するメンバーの意見を重視しすぎたり、自分と似たタイプのメンバーの貢献を過大評価したりする無意識バイアスは、多様なメンバーの強み発見の妨げとなります。

無意識バイアスを認識しつつ、メンバー一人ひとりの多様な側面に関心を持つことが、隠れた強みを発見する第一歩です。

メンバーの「隠れた強み」を発見するための具体的なアプローチ

では、どのようにしてメンバーの隠れた強みを発見できるのでしょうか。いくつかの具体的な方法をご紹介します。

1. 丁寧な1on1ミーティングを通じた対話

定期的で質の高い1on1ミーティングは、メンバーの「人となり」や内面に深く触れる貴重な機会です。業務目標の進捗確認だけでなく、以下のような問いかけを通じて、本人の強みや可能性を探ります。

形式的な報告会ではなく、メンバーが安心して自身の経験や考えを話せる雰囲気を作り出すことが重要です。

2. 多角的な視点からの観察とフィードバック

リーダー一人の視点だけでは、メンバーの強みを見落とす可能性があります。 * 同僚からのフィードバック: チーム内の他のメンバーに、特定のメンバーの良い点や「助けられたこと」などをカジュアルに尋ねてみることも有効です。異なる立場からの意見は、リーダーが気づいていない強みを明らかにする場合があります。 * 非公式な場での観察: 会議中だけでなく、休憩時間やランチタイム、社内イベントなど、非公式な場でのメンバーの振る舞いや関わり方からも、コミュニケーション能力や協調性、リーダーシップの片鱗など、業務遂行とは異なる側面での強みを発見できることがあります。 * 過去の経歴やプロジェクトの振り返り: メンバーの履歴書や過去のプロジェクトでの役割、成果などを改めて確認することも、本人も忘れているような経験やスキルを発見するヒントになります。

3. ストレングスファインダーなどのツール活用(補足)

組織によっては、ギャラップ社のストレングスファインダーなどの「強み診断ツール」を導入している場合があります。これらのツールは、個人の特性や傾向を客観的に捉える手がかりとなります。ただし、ツールの結果が全てではなく、あくまで自己理解や対話の出発点として活用することが望ましいでしょう。結果を鵜呑みにせず、診断された強みが実際の業務や行動にどう現れているかを、本人との対話や観察を通じて確認することが重要です。

発見した「強み」をチームの力に変える実践方法

メンバーの隠れた強みを発見したら、次はその強みをチーム全体の成果に繋げるための具体的なアクションが必要です。

1. 役割や業務のアサインメントへの反映

メンバーが持つユニークな強みや興味・関心を、日々の業務アサインメントに意識的に反映させます。例えば、 * 細部への注意力が高いメンバーに、資料の最終チェックやデータ分析の役割を任せる。 * 異なる部署との調整が得意なメンバーに、クロスファンクショナルなプロジェクトの窓口を依頼する。 * 特定分野への深い知識や経験を持つメンバーに、その分野に関する情報収集やチーム内共有を促す。 * 傾聴力があり、メンバーの悩みを聞き出すのが得意なメンバーに、非公式なメンター役をお願いする。

本人の希望やキャリアパスも考慮しつつ、ストレッチアサインメントとして少し挑戦的な役割を与えることも、強みの成長と本人への自信に繋がります。

2. チーム内での知識・経験共有の機会設定

特定のメンバーが持つユニークな知識や経験は、チーム全体の学びとなり、新たな視点をもたらします。 * 簡易勉強会やライトニングトーク: 特定のメンバーが持つ専門知識や、異業種での経験について、チーム内で共有する場を設けます。形式張らず、15分程度の短い時間でも効果があります。 * ペアワークやメンター制度: 異なるバックグラウンドを持つメンバー同士を組み合わせ、お互いの強みを学び合う機会を作ります。

これにより、強みを持つ本人は承認欲求が満たされ、他のメンバーは新たな知識や視点を得ることができます。

3. 成功事例の共有と承認

メンバーの強みが活かされ、チームに貢献した具体的な事例を積極的に共有し、本人を承認します。 * 会議の冒頭で、「〇〇さんの〇〇という強みが活かされたおかげで、今回のプロジェクトは成功しました」のように具体的に言及する。 * チーム内のチャットやメールで、貢献内容と紐づけて感謝のメッセージを送る。 * 人事評価の際に、形式的な目標達成度だけでなく、そのプロセスで本人のどのような強みがどのように発揮されたかを具体的にフィードバックする。

これにより、メンバーは自身の強みを自覚し、さらに伸ばそうというモチベーションに繋がります。また、他のメンバーも多様な貢献の形があることを理解し、自身の強みについて考えるきっかけとなります。

公平性を保ち、全てのメンバーが活躍できる環境へ

多様なメンバーの強みを引き出し、活かす取り組みを進める上で、特定のメンバーに機会が偏らないよう、公平性を保つ視点が不可欠です。全てのメンバーに対して、強みを発見するための対話の機会を持ち、それぞれの強みを活かせる可能性を探る姿勢を示すことが重要です。

また、強みを活かすことに注力するあまり、個人の弱みの克服や、チームとして必須のスキルの習得がおろそかにならないよう、バランスを取る必要があります。メンバー一人ひとりの成長と、チーム全体の目標達成の双方を見据えたアプローチが求められます。

まとめ

チームの多様性は、適切にマネジメントされれば組織の大きな力となります。メンバー一人ひとりの「隠れた強み」を発見し、それをチーム内で活かすことは、多様なメンバーのエンゲージメントを高め、チーム全体のパフォーマンスを向上させる上で不可欠なリーダーの役割です。

無意識バイアスに注意を払いながら、メンバーとの丁寧な対話、多角的な観察、そして具体的な業務アサインメントや共有機会の設定を通じて、多様な強みが輝くインクルーシブなチームを作り上げていきましょう。日々の小さな実践の積み重ねが、すべてのメンバーが公平に、そしていきいきと活躍できる組織へと繋がるはずです。