インクルーシブ組織実践NAVI

「言っても無駄」をなくす:多様なメンバーが遠慮なく発言できる心理的安全性の作り方

Tags: 心理的安全性, チームマネジメント, インクルージョン, リーダーシップ, コミュニケーション

チームを率いるリーダーの皆様にとって、メンバー一人ひとりの意見やアイデアがチームの力となることはご周知の通りです。しかし、チーム内で一部のメンバーが発言をためらったり、重要な意見を言わずに「遠慮」しているように見えたりする状況に直面することはないでしょうか。このような「声なき声」が多い状態は、多様な視点や潜在的なリスクを見落とす可能性を高め、チームのインクルージョンを阻害する要因となり得ます。

特に多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まるチームでは、経験や価値観の違いから生じる「どうせ言っても理解されないだろう」「自分の意見は場違いかもしれない」といった懸念が、「遠慮」として表れやすい傾向があります。このような状況を放置すれば、チーム全体のパフォーマンス低下だけでなく、メンバーのエンゲージメント低下や早期離職につながるリスクも考えられます。

本記事では、チーム内の「遠慮」をなくし、多様なメンバーが安心して発言できる心理的安全性をリーダーがどのように育むかについて、具体的なアプローチを解説します。実践的なステップを通じて、チームの潜在能力を最大限に引き出すためのヒントを提供いたします。

チームに「遠慮」が生まれる背景

チーム内でメンバーが発言をためらう背景には、いくつかの要因が考えられます。リーダーがこれらの背景を理解することは、適切な対策を講じるための第一歩となります。

これらの要因は、チームの心理的安全性が低い状態を示唆しています。心理的安全性とは、「チーム内で自分の考えや気持ちを、誰に対してでも安心して発言できる状態」を指し、Googleの調査などで高いチームパフォーマンスに不可欠であることが示されています。

インクルーシブな心理的安全性の重要性

心理的安全性が高いチーム、特に多様なメンバーから成るチームでは、以下のようなメリットが期待できます。

インクルーシブな組織を目指す上で、この心理的安全性の構築は、多様性を単に「集める」だけでなく、それを「活かす」ために不可欠な基盤となります。

リーダーのための具体的な「遠慮」をなくすアプローチ(発話促進策)

では、リーダーはどのようにしてチームの「遠慮」を減らし、インクルーシブな心理的安全性を高めることができるのでしょうか。ここでは、明日から実践できる具体的なアプローチをいくつかご紹介します。

1. 傾聴と承認の徹底

2. 質問の工夫

3. 小さな発言機会の創出

4. 「失敗しても大丈夫」な雰囲気作り

5. 非言語コミュニケーションへの配慮

継続的な取り組みとしての心理的安全性

心理的安全性の高いチーム文化は、一朝一夕に築けるものではありません。一度築いたとしても、新しいメンバーの加入やチームの状況変化に応じて、常に意識し、育み続ける必要があります。

リーダーは、定期的にチームメンバーからのフィードバックを収集することをお勧めします。「このチームで安心して発言できていますか?」「どんな時に発言しにくいと感じますか?」といった問いかけを通じて、現状を把握し、改善につなげます。また、リーダー自身の無意識バイアスが、特定のメンバーの発言を軽視したり、発言しにくい雰囲気を作ったりしていないか、定期的に自身の言動を省みることも重要です。

まとめ

チーム内の「遠慮」をなくし、多様なメンバーが安心して発言できる心理的安全性を築くことは、チームのインクルージョンを深め、パフォーマンスを向上させるために不可欠です。これは単なる雰囲気の問題ではなく、リーダーの具体的な行動と継続的な働きかけによって育まれる文化です。

本記事で紹介した傾聴、質問の工夫、小さな発言機会の創出、「失敗しても大丈夫」な雰囲気作り、非言語コミュニケーションへの配慮といった実践的なアプローチを試してみてください。これらの取り組みを通じて、多様なメンバーの「声なき声」に耳を傾け、一人ひとりがチームに貢献できている実感を持てる、真にインクルーシブなチームを創り上げることが期待できます。